キリンの首はなぜ長い  HOME  戻る

「キリンさんの首はどうして長いのかな?」。誰もが幼い頃に動物園で抱いた疑問です。「最初から長かったのさ」と片付けることもできますが、短い首が伸びたと考えると、「どのようにして進化したのか」は大きな謎です。
 フランスのラマルクは、「高い枝の葉を食べようと努力して首が少し伸び、それが子に遺伝し、同じ努力を何代も重ねるうちに長い首になった」と考えましたが、生後獲得した性質は遺伝しないとして、現在は否定されています。私達が頑張って筋肉を鍛えても、遺伝子が変化するわけではないので、子どもには遺伝しないのです。
 イギリスのダーウィンは、「低い枝の葉が減った環境では、高い枝の葉を食べることのできる首が長めのキリンが生き残って子孫を残し、何代も重ねて長い首になった」と考え、適者生存、つまり、環境に対して有利な者が自然の中で選択されて子孫を残す結果、進化が起こるとしました。
 ダーウィンの「自然選択説」は、現在でも基本的に支持されていますが、彼を悩す事実もありました。
「美しい羽根のクジャクは天敵に目立ち、生存に不利なはずなのになぜ子孫を残せたのか」。彼はこの疑問に「メスが美しい羽根のオスを選んだから」という答えを出しました。これは「性選択」と呼ばれ、ヒトにおいても、特定の外見の異性が選ばれ続ければその方向に進化し、基準が流行として同一化されて情報が広まれば、進化が劇的に速まるかもしれません。
 話をキリンの進化に戻すと、首を伸ばすには頭に血液を送る仕組みも必要であったり、中間の首の長さの化石が発見されていないなど、難しい問題が山積みです。ダーウィン以来、様々な説が発表されましたが、キリンの首が伸びるような大きな進化を完全に説明するには至っていません。進化の謎解きは、まだまだ続きそうです。

※この文章は、生物Iの授業で話した内容をまとめたものです。
化学教育兵庫サークルに校正、編集していただき、神戸新聞「理科の散歩道」に掲載されました。

Ikimono-Note by E.Yoshida