高性能化の代償  HOME  戻る

 もうすぐ春ですね。気温が上がると、冬の間、見かけることが少なかった昆虫やハ虫類が活動を始めます。彼らは気温とともに体温が変動する変温動物なので、寒い冬の間は体温が下がり、動けないのですが、私たちは体温が一定な恒温動物なので、冬でも活発に行動できます。
 私たちの先祖がこの能力を獲得したのは2〜3億年前で、当時の寒い気候に適応して両生類から進化したと考えられています。
 最初の頃は、背中にヨットのような大きな帆をもち、太陽光を受けて血液を温めるものもいましたが、やがて、肝臓や筋肉で発生させた熱を、血液に乗せて全身に巡らせて体を温め、体毛で保温し、汗や呼吸の中で水を蒸発させて冷やす現在の恒温動物のシステムが完成しました。
 こうして恒温動物である哺乳類や鳥類は、変温動物を抑えて繁栄していますが、全ての面で優れているわけではありません。
 最近、停車中にエンジンを止めて燃料を節約するアイドリングストップ車や、電源を切ったときの待機電力を抑えた省エネ家電が増えていますが、恒温動物は、動かないときでも常に体を温め続けるため、いつでもすぐに動き出せる反面、変温動物の約30倍もの食料を消費する、実に燃費の悪い動物なのです。
 この反省?からか、哺乳類の中でもナマケモノは変温動物に戻り、1日の食事が約10gの植物だけと、ヨーロッパに持ち込まれた当時は「風を食べて生きる」と不思議がられたほど少ない食料で、怠けたようにゆったりと生きています。
 私たちは変温動物には戻れませんが、便利さを求めて資源やエネルギーを大量消費する生活は見直す必要があるかもしれません。

※この文章は、生物Iの授業で話した内容をまとめたものです。
化学教育兵庫サークルに校正、編集していただき、神戸新聞「理科の散歩道」に掲載されました。

Ikimono-Note by E.Yoshida