先日、名古屋で生物多様性条約に関する国際会議が開かれました。 現在、地球上には、未知のものも含めると3000万種の生物が生息していると考えられていますが、これは、40億年前に最初の生命が誕生して以来、順調に種類を増やし続けた結果ではありません。 私たちの祖先は、地球環境変化などによって幾度となく生存の危機に直面し、化石として残るような高等生物に進化した5億年前以降だけでも5回の大量絶滅に見舞われています。 恐竜が絶滅した6500万年前の大量絶滅は有名で天体の衝突による環境変化で70%の種が絶滅し、過去最大の2億5000万年前の大量絶滅では90%以上の種が絶滅したといわれています。私たちの祖先は、これらの苦難を乗り越えてなんとか生き延びてきたのです。 ところが、今、6回目の大量絶滅が危惧されています。そしてそれは、過去5回の環境変化などの原因と違い、ヒトというたった1種の生物による地球環境破壊や乱獲により、1年間に4万種という猛烈なペースで進み、今後100年間で半数が絶滅してしまうという予測もあります。6500万年前の大量絶滅でさえ数百万年かけて進行したので、これは異常な速さです。 今日もまた、環境破壊により、名も知れぬ小さな仲間たちが地球上から消え、これらの動植物の中には未発見の医薬品の原料も埋もれています。 また、1万年前、ヒトの活動が活発化した頃、マンモスやサーベルタイガーなどの大型ほ乳類が姿を消しています。これらの大型動物は、ヒトに危害を加える可能性から駆除され、肉や毛皮、牙などを求めて乱獲されました。 つい最近まで生き延びていた仲間たちも次々に犠牲になり、ニュージーランドに生息した世界最大の鳥類ジャイアントモアは 400年前、我が国でもニホンオオカミが 100年前に絶滅しました。 そして今も、多くの大型ほ乳類が絶滅危惧種に指定されています。私たち自身は直接手を下していませんが、たとえばマウンテンゴリラは、私たちの携帯電話の電子部品に必要なタンタルというレアメタルの採掘のための森林伐採や駆除もあって、絶滅の危機に瀕しています。 六甲山系はイノシシの出没で有名ですが、今年の秋は、日本中でエサとなるドングリなどの不作で人里に現れたツキノワグマの駆除のニュースが多く流れました。国内推定生息数1万頭のうち、今年だけでも2000頭以上が駆除されたようです。人身や農作物に被害が出るため非常に難しい問題ですが、元々は、広葉樹林の破壊が原因ともいわれるので、共存共生の道が探れればと思います。 |
※この文章は、生物Iの授業で話した内容をまとめたものです。
化学教育兵庫サークルに校正、編集していただき、2010年12月に神戸新聞「理科の散歩道」に掲載されました。
Ikimono-Note by E.Yoshida